名無し
文=David Axe
第47独立機械化旅団はウクライナ軍屈指の旅団である。米国製の装甲車両を配備され、北大西洋条約機構(NATO)式の訓練を受けたこの旅団は、最も優れたNATO部隊のように、迅速に、激しく、しばしば夜間に戦闘を行う。
ただ、こうした高い能力は第47旅団の2000人規模の将兵にとって、恵みであると同時に呪いでもある。ウクライナ軍の司令部はそれを頼みとして、最も激しい戦闘が行われる場所に第47旅団を配置したがるからだ。
第47旅団はウクライナ軍が2023年6月に始めた反転攻勢で、南部の主力部隊に抜擢された。その後同年10月、ロシア軍がウクライナ東部の都市アウジーウカに攻勢をかけ始めると、第47旅団は南部から東部に転用され、ウクライナ軍の防御拠点だった同市を増強した。結局、アウジーウカからの守備隊の撤退を防ぐことはできなかったものの、それを遅らせることに寄与した。
(省略)
しかし、第47旅団の交代計画はアウジーウカ方面のロシア野戦軍につけ入る隙を与えた。それは、ロシア軍が2022年後半、ウクライナ東部の大都市ハルキウ方面で喫したような大敗北をウクライナ軍に与えられるほどのチャンスだった。
この週末、第47旅団がアウジーウカの北西に位置するオチェレティネ村の東の前線から引き揚げていたとき、ロシア軍はウクライナ側の防御線を攻撃し、突破する寸前までいった。この防御線から西のポクロウシクまでの30kmほどの一帯は無防備なエリアになっている。
第47旅団が抜けたあとは第115独立機械化旅団が引き継ぐことになっていた。だが、何かがおかしかった。第47旅団の有名な中隊長で昨夏の反攻作戦で片足を失ったミコラ・メリニクによれば、第115旅団の「一部の部隊が逃げ出してしまった」のだという。
(省略)
ロシア軍の斥候兵やドローン(無人機)操縦士は、戦闘で練磨された第47旅団の部隊がこもっていた塹壕に、第115旅団の新たな部隊が入るのだろうと見込んでいた。だが、探りを入れたところ、そこはもぬけの殻だった。
これはロシア軍の第30独立自動車化狙撃旅団にとって、アウジーウカから北西へ延びる線路沿いに前進し、狭い突出部を掌握する好機だった。地図上で見ると、長さ8kmほどのこの突出部は、ウクライナ側の防御線に突き刺さったナイフのような形になっている。鋭い先端はオチェレティネに半分ほど食い込んでいる。
ロシア側の突破を許せば、アウジーウカ西方のウクライナ側の防御線は総崩れになり、この方面に配置されている部隊数万人が退却を強いられるおそれがあった。その場合、ドネツク州の住民数十万人も避難を余儀なくされていたかもしれない。比較のために言えば、ロシア軍は2022年秋、ハルキウ方面でウクライナ側に防御線を突破され、大潰走する結果になっている。
結局、ロシア軍はこの週末、ウクライナ側の後方深くまでは進撃しなかった。理由はただひとつ、後退していた第47旅団が途中で引き返し、戦闘に復帰したからである。「第47機械化旅団は仕事に戻った」とメリニクはソーシャルメディアで報告している。
(省略)
とはいえ、戦いが終わったわけではない。ロシア軍は予備部隊を突出部に投入できれば、さらに前進できるかもしれない。この点で、近くにロシア軍の第90親衛戦車師団が待機していて、まだ戦闘に参加していないのは注目に値する。
第90師団が西へ移動し、突出部を強固にできれば、少なくともウクライナ側の反撃を複雑にすることはできるだろう。ウクライナ側にとって最悪のシナリオは、疲弊した第47旅団がこの師団によって西へ押しやられることだ。
(省略)
暗いニュースは、第115旅団で起きた問題は、どうもこの旅団に限らないウクライナ軍の組織的な問題らしいことだ。ウクライナ東部の戦線で立ち行かなくなったウクライナ軍部隊は、過去数週間でこれで2個目だ。
最初の部隊は第67独立機械化旅団で、アウジーウカの北およそ30kmに位置し、現在、ロシア軍に最も狙われている都市であるチャシウヤールの、最も狙われている地区を守っていた。しかし、極右の政治集団のメンバーが多かったとされる幕僚らが絡んだ内紛が発生し、ウクライナ国防省は整理せざるを得なくなった。
ウクライナの地上部隊に戦闘旅団は100個かそこらしかなく、その多くは数カ月ないし数年戦い続けているため消耗している。第47旅団がまさにそうだ。
現在のウクライナは2個旅団を丸ごと失う余裕はないし、最良の旅団を酷使し続ける余裕もない。数百億ドル分の新たな兵器が届いても、それを使う部隊が十分な数いて、しっかり休息もとり、秩序だった状態でなければ役に立たない。
4/25(木) 10:00配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/f95cab43883b8604c17eab8b58c688cbb8cf9219
第47独立機械化旅団はウクライナ軍屈指の旅団である。米国製の装甲車両を配備され、北大西洋条約機構(NATO)式の訓練を受けたこの旅団は、最も優れたNATO部隊のように、迅速に、激しく、しばしば夜間に戦闘を行う。
ただ、こうした高い能力は第47旅団の2000人規模の将兵にとって、恵みであると同時に呪いでもある。ウクライナ軍の司令部はそれを頼みとして、最も激しい戦闘が行われる場所に第47旅団を配置したがるからだ。
第47旅団はウクライナ軍が2023年6月に始めた反転攻勢で、南部の主力部隊に抜擢された。その後同年10月、ロシア軍がウクライナ東部の都市アウジーウカに攻勢をかけ始めると、第47旅団は南部から東部に転用され、ウクライナ軍の防御拠点だった同市を増強した。結局、アウジーウカからの守備隊の撤退を防ぐことはできなかったものの、それを遅らせることに寄与した。
(省略)
しかし、第47旅団の交代計画はアウジーウカ方面のロシア野戦軍につけ入る隙を与えた。それは、ロシア軍が2022年後半、ウクライナ東部の大都市ハルキウ方面で喫したような大敗北をウクライナ軍に与えられるほどのチャンスだった。
この週末、第47旅団がアウジーウカの北西に位置するオチェレティネ村の東の前線から引き揚げていたとき、ロシア軍はウクライナ側の防御線を攻撃し、突破する寸前までいった。この防御線から西のポクロウシクまでの30kmほどの一帯は無防備なエリアになっている。
第47旅団が抜けたあとは第115独立機械化旅団が引き継ぐことになっていた。だが、何かがおかしかった。第47旅団の有名な中隊長で昨夏の反攻作戦で片足を失ったミコラ・メリニクによれば、第115旅団の「一部の部隊が逃げ出してしまった」のだという。
(省略)
ロシア軍の斥候兵やドローン(無人機)操縦士は、戦闘で練磨された第47旅団の部隊がこもっていた塹壕に、第115旅団の新たな部隊が入るのだろうと見込んでいた。だが、探りを入れたところ、そこはもぬけの殻だった。
これはロシア軍の第30独立自動車化狙撃旅団にとって、アウジーウカから北西へ延びる線路沿いに前進し、狭い突出部を掌握する好機だった。地図上で見ると、長さ8kmほどのこの突出部は、ウクライナ側の防御線に突き刺さったナイフのような形になっている。鋭い先端はオチェレティネに半分ほど食い込んでいる。
ロシア側の突破を許せば、アウジーウカ西方のウクライナ側の防御線は総崩れになり、この方面に配置されている部隊数万人が退却を強いられるおそれがあった。その場合、ドネツク州の住民数十万人も避難を余儀なくされていたかもしれない。比較のために言えば、ロシア軍は2022年秋、ハルキウ方面でウクライナ側に防御線を突破され、大潰走する結果になっている。
結局、ロシア軍はこの週末、ウクライナ側の後方深くまでは進撃しなかった。理由はただひとつ、後退していた第47旅団が途中で引き返し、戦闘に復帰したからである。「第47機械化旅団は仕事に戻った」とメリニクはソーシャルメディアで報告している。
(省略)
とはいえ、戦いが終わったわけではない。ロシア軍は予備部隊を突出部に投入できれば、さらに前進できるかもしれない。この点で、近くにロシア軍の第90親衛戦車師団が待機していて、まだ戦闘に参加していないのは注目に値する。
第90師団が西へ移動し、突出部を強固にできれば、少なくともウクライナ側の反撃を複雑にすることはできるだろう。ウクライナ側にとって最悪のシナリオは、疲弊した第47旅団がこの師団によって西へ押しやられることだ。
(省略)
暗いニュースは、第115旅団で起きた問題は、どうもこの旅団に限らないウクライナ軍の組織的な問題らしいことだ。ウクライナ東部の戦線で立ち行かなくなったウクライナ軍部隊は、過去数週間でこれで2個目だ。
最初の部隊は第67独立機械化旅団で、アウジーウカの北およそ30kmに位置し、現在、ロシア軍に最も狙われている都市であるチャシウヤールの、最も狙われている地区を守っていた。しかし、極右の政治集団のメンバーが多かったとされる幕僚らが絡んだ内紛が発生し、ウクライナ国防省は整理せざるを得なくなった。
ウクライナの地上部隊に戦闘旅団は100個かそこらしかなく、その多くは数カ月ないし数年戦い続けているため消耗している。第47旅団がまさにそうだ。
現在のウクライナは2個旅団を丸ごと失う余裕はないし、最良の旅団を酷使し続ける余裕もない。数百億ドル分の新たな兵器が届いても、それを使う部隊が十分な数いて、しっかり休息もとり、秩序だった状態でなければ役に立たない。
4/25(木) 10:00配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/f95cab43883b8604c17eab8b58c688cbb8cf9219